2013年10月31日木曜日

貴婦人と一角獣の謎


「貴婦人と一角獣」には、まだわからないことがいっぱいあります。

たとえば、6枚のタペストリーの意味。

研究者たちは、1920年代には、 5枚のタペストリーが五感の寓意なのだろうということで、だいたい一致していました。

一番の謎は、6枚目の「我が唯一の望みに」。

貴婦人と侍女の後ろにある天幕に、はっきりと織り込まれているこの言葉は何なのか。

これに関しては色々な説があり、どれが正しいのか、まだ決着はついていないようです。

しっくりするのは、15世紀の神学者ジャン•ジェルソンの思想の影響だとするもの。ジェルソンは、1402年に6つの感覚について語っています。

その中でジェルソンは、5感は体の感覚で、心は内なる感覚だと言っています。その上で、一番大事なのは心で、心は理性の助けを借りて、他の感覚の模範となり、魂を守らなければならないと説いています。

愛、情熱、意思のありどころである心は、ジェルソン神学の中心の一つで、6つの感覚というテーマは、彼の著作に繰り返し現われます。

魂を何から守るのかといえば、ジェルソンは贅沢を例に挙げています。
だとすると、6枚目のタペストリーで、貴婦人がアクセサリーを外し、宝石箱の中に置くシーンも納得がいくと思います。

もっとも、「我が唯一の望みに」は1枚目のタペストリーであり、貴婦人はアクセサリーを置いているところではなく、手に取っているところなのだ、という解釈もあります。

様々な解釈に決着がつき、全ての謎が解ける日はあるのでしょうか。

決着がつく必要も、ないのかもしれませんね。

(今日の記事は、1999年に発表されたジャン•パトリス・ブーデの記事を元にしています。)

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ヨーロッパの職人によるゴブラン織りのタペストリー

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