2013年10月22日火曜日

貴婦人と一角獣の魅力


日本でも展覧会が開かれた、タペストリー「貴婦人と一角獣」。 まずざっと、この作品を巡る歴史的事実をさらってみましょう。

「貴婦人と一角獣」は、1484年から1500年の間にフランドルで織られたと言われています。誰が作らせたのかについては異論がありますが、タペストリーの中に描かれた旗に見られる紋章から、ルヴィスト家の長男ジャンか弟のアントワーヌということになっています。今はアントワーヌ説が有力のようです。

アントワーヌ・ルヴィストは、イタリアへ戦争に行くフランソワ一世のお供をしたり、ルイ十二世の下で働きました。スイスやイギリスに外交官として派遣され、戦争の後始末をして条約を結んだりしています。

その後3世紀以上、タペストリーは様々な人の手を転々とします。

そして1835年から1840年の間に、作家のジョルジュ・サンドが、シャトー・ド・ブサックでタペストリーを見て感嘆。当時の恋人で、やはり作家のプロスペール・メリメにその話をしたようです。メリメは文化遺産の視察官をしていました。彼はシャトー・ド・ブサックを訪ね、このタペストリーを文化遺産として正式に登録しました。

彼らのお陰で、わたしたちは今、この傑作を目にすることができるのですね。

さて、このタペストリーのどこが、今でも人々を魅了するのでしょうか。

「貴婦人と一角獣」は、6点のタペストリーで構成されています。 ミル・フルール(千花模様)の敷き詰められた背景に、一人か二人の人物がいます。彼女たちを、様々な動物が囲んでいます。一角獣やライオンの他に、猿やオウム、そしてヨーロッパで普通に見られるウサギや鳥もいます。

ミル・フルールを背景に使ったタペストリーは、この時代にはたくさんありましたが、「貴婦人と一角獣」のミル・フルールは、一つ一つの花が、個性的に表現されています。ただ機械的に花で埋め尽くしたミル・フルールとは、格段の差があります。

また、それぞれの動物の動きを追ってみましょう。 猿が花かごの上に乗って花の香りを嗅いだり、貴婦人がオウムにお菓子を取ってやったり、ウサギが後ろ足で立って何か食べていたり、細かいところまで、とても生き生きとしています。

人物はいつも浮き島のようなものに乗っています。「想像力が駆け巡る空飛ぶ絨毯のようだ」と言う人もいます。 確かに、遠近の無い画面の中で、この「島」は 浮遊しているような印象を与えます。

全てが夢の中のようです。

中心人物の女性はたおやかで、貴婦人と呼ばれるのに相応しい気品があります。 どこを見ても引きつけられるものがあり、いつまで見ていても飽きません。

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ヨーロッパの職人が作ったゴブラン織りのタペストリー

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